
がんばって、がんばって、
みんなの期待に応えようとして、
必死にがんばっているあなたへ。
「自分は、何のためにがんばっているんだろう?」
そう思ったことはありませんか。
何かをしなくてもいい。
何者にもなろうとしなくていい。
ただ、ここにいるだけでいい。
ここは、
あなたが、本来のあなたでいられるような場所。
失ってはいけないもの。

サラリーマンを15年続けた。
生き方に悩み、
転職して失敗し、
気がつけば、すべてを失っていた。
そんなとき、
地域おこし協力隊として、この阿東に移住した。
ここで、初めて知った。
肩書きでも、年収でもなく、
目の前の人と直接触れ合うことの喜びを。
自分が心からやりたいと思うことを全力でやり、
それで誰かが喜んでくれる。
それこそが、本当の幸福なのではないか。
そんなわたしが今、取り組んでいるのが
古民家の再生事業だ。
この過疎化が進む地域には、
本当に価値のある古民家が、まだ数多く残っている。
しかし、その多くは管理もされず、
静かに朽ちていくのを待つだけの状態だ。
今回オープンしたこの家も、その一つだった。
住んでいたおばあちゃんが半年前に施設へ入られてから、
ずっと空き家だった。
おばあちゃんは言った。
「わたしが死んだら、この家は朽ちてしまってもいい。」
本当は残したい。でも、誰にも迷惑をかけたくない。
そんな気持ちから出てきた言葉だ思う。
でも、この家は、本当に価値がある。
そんな簡単に失っていいものではない。
だから引き止めた。
そして始めたのが、「かんぬしの宿」だ。
だが、家主は懐疑的だった。
「ここで宿をやって、お客が来ますか?」
当然の疑問だ。
だから、わたしは必死に考えた。
この地域のすばらしさを、
どうすれば具体的に説明できるか。
どうすれば、この宿の意味を伝えられるか。
そして生まれたのが――
『山口篠目モデル』である。
山口篠目モデルとは。

まず、わたしの住んでいる山口市阿東という地域について説明する。
阿東は、旧阿東町の面積でいうと約293.08㎢。
これは東京23区(約627㎢)のほぼ半分にあたる広さだ。
でも、人口は現在約4,000人前後。
しかも、そのうち約50%以上が65歳以上という、全国平均(約29%)を大きく上回る超高齢・過疎地域である。
そして、篠目という地域は、この阿東の西側に位置する地域だ。
近くには長門峡(国指定名勝)があり、本当に豊かな自然に囲まれている。
この阿東が山口市に併合されたのは2010年(平成22年)1月16日。
それまでは「阿東町」だった。
この地域が名目上は山口市になったとはいえ、
中の人も、外の人も、阿東町と山口市は全く別物という認識だ。
実際、阿東の人は今でも市街地に行くことを
「山口に行く」と言う。
阿東の中心地・徳佐から山口市街地までは
車で約1時間(約45km)かかる。
だから、山口の人はこう思う。
「阿東は遠い。」
でもね、それは正確ではない。
わたしが住んでいる篠目は、
市街地まで約30分(約25km)だからだ。
通勤・通学の圏内である。
しかも、市街地との高低差は約300m。
30分・300mで、生活が完全に切り替わる。
都会と田舎を「どちらか」ではなく、
日常の中で「両方」選べる暮らし。
それが、山口篠目モデルだ。
かんぬしの宿とは。

ここは、移住を迫る場所ではない。
少し滞在し、
朝の空気を吸い、
縁側に座り、
何もしない時間を過ごす。
そして、自分の心に問いかける。
ここで暮らしたいのか。
年に数回でいいのか。
それとも、違うのか。
正解はない。
でも、体験しないとわからない。
だから、「かんぬしの宿」がある。
ここは、自分自身が本当に求めているものを知るための場所だ。
そして、山口篠目モデルにおいて、外の人が気軽に訪れることのできる拠点。
この地域をもっと多くの人に知ってもらうための窓口だ。
――――
料金は一棟貸しで一泊23,000円。
日中のみの利用は10,000円。
定員は最大8名。
家主同居型の宿泊施設です。
なぜやるのか。

わたしは、この篠目に来て本当に救われた。
でも、地域の人は
この土地の価値を当たり前にしてしまっている。
もったいない。
だから、わたしが言う。
この土地は、世界に誇れると。
外の人が「いいところですね」と言う声を、
地域の人に届けたい。
人が来なければ、地域は残らない。
小さな「来てみたい」から始める。
そのきっかけをつくるために、
わたしは「かんぬしの宿」を始める。
この先にあるもの。

目指すのは、多くの人が訪れ、
そして暮らす、
自然豊かで、みんなが笑顔で生きられる地域。
「かんぬしの宿」は、その最初の入口にすぎない。
蔵を改装してブックカフェに。
放置された畑をコミュニティガーデンに。
家具づくりができる作業場をつくる。
入口は、何でもいい。
その中の一人が
「ここに住みたい」と思ってくれたらいい。
だからわたしは、宅建士の資格を取り、
自分で家を改修できる力を身につけた。
思いつきではない。
本気だ。
地域の未来は、壮大な政策から始まるのではない。
小さな「来てみたい」から始まる。
わたしは、この地域を
みんなが笑顔で、心から楽しめる場所にしたい。
あなたは、あなたのままでいい。

最後に、これだけは言わせてほしい。
人は、生きているだけできっと意味がある。
つらいこともある。
苦しいこともある。
がんばっても、報われないことだってある。
それでも。
ありのままのあなたを、
認めてくれる場所はきっとある。
何かをしなくてもいい。
何者にもなろうとしなくていい。
ただ、ここにいるだけでいい。
ふと、帰りたくなる場所。「かんぬしの宿」が、
そんな場所になってくれたらと、心から願っています。
ただ、そこにいるだけでいい。
そう思えたなら、いつでもお待ちしています。

